2014年8月1日金曜日

当院スタッフのお話です。

彼は週2回、訪問リハビリで伊良部島に出掛けています。ちょうどその日は大雨で、患者さん宅に到着したときはずぶ濡れ。すぐに着替えたそうです。

そのとき、首から下げていた車の鍵を外し、椅子の背もたれにぶら下げました。これが事件の始まり。

約1時間後、鍵のことをすっかり忘れたまま、彼は患者さん宅を後にしました。

船に乗り、平良港に到着。さあ、診療所に戻ろうと、停めてあった車の前に来たとき、嫌な予感が…

「鍵が、にゃーん」

それと同時に、椅子の背もたれに残された、寂しそうな鍵の姿が目に浮かんだそうです。

患者さん宅に電話し、鍵の安否確認はできました。しかし、彼と鍵は海を隔てて離ればなれ。再会は容易でありません。

すると、「次の船に乗せて届けるよ」と患者さんの家族が言って下さいました。こうして鍵は、船員さんに預けられ、一路平良港を目指しました。

桟橋で待つこと45分。到着した船から、ちょいコワ面の船員さんが降りて来ました。その手にはビニール袋に包まれた鍵が見えました。

「会いたかったよ」

「ありがとうございます」
照れ隠しの笑みを浮かべながら彼は言いました。すると、船員さんは何も言わずに、顔を背けながら、ポンと鍵を手渡してくれたそうです。

「礼なら要らないぜ。ただな…お前さんも困った人を見かけたら助けてやるんだぞ。それが俺に対する礼がわりだ」
船員さんの後ろ姿が、そう語っていました。

船が通い、人びとが行き交う桟橋の風景。これも伊良部架橋と共になくなってしまうのだろうか…彼は海の向こうに浮かぶ伊良部島を眺めながら、センチメンタルな気分に浸ったそうです。

診療所の8回目の誕生日に
がちょん